太良町町勢要覧
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タイラギの水揚げ風景(昭和30年代)広大な有明海から至高の逸品を見つけ出す タイラギ漁は祖父の代から私の代で3代目になります。20代の頃、タイラギ漁の船は太良町だけで250艘いました。長崎県や福岡県からも船が出ていたので、有明海に400艘ほどいたのではないでしょうか。若者たちは船にスピーカーをつけて音楽を鳴らして海へ出て行き、まるで海上パレードのよう。漁場では船と船がぶつかりあってゴトンゴトンと音を立て、潜水士も海底でぶつかるほどでした。タイラギは獲っても獲っても下から湧いてくる感じで、本当によく獲れました。タイラギ漁はここ太良から始まったのだから、他県の潜水士には負けたくないと皆ががんばっていたように思います。 平成12年からタイラギがいなくなって休漁が続き、多くの潜水士は町外へ出稼ぎに出ていきました。平成21年はタイラギが成育して私も久しぶりに有明海に潜りましたが、船が港に戻ると、お年寄りが手伝いに来ていて、港に笑い声が響いていました。港に勢いがあるのを見て改めて「ああ、ここはタイラギで栄えてきた町なのだ」と実感したものです。平成22年はタイラギの斃死(へいし)が確認され、漁が安定しないためになかなか後継者を育てられません。再びタイラギが獲れるようになり、港に笑顔が溢れることを望んでいます。有明海の元気がタイラギをもたらす タイラギ漁は潜水服を着て海に潜り、海底に突き刺さるようにして生育する貝を獲る潜水漁です。潜水技術は大正時代に韓国から伝わり、太良町から隣の長崎県や福岡県に広がったといわれています。干潟のイメージから有明海は浅瀬と思われがちですが、太良町沖は20〜25メートルの深さがあり、港から5分ほどで漁場に着く立地にも恵まれています。近年は貝の生態系を整えるため環境保全に努め、漁の制限も行っています。タイラギ漁その歴史は…13年ぶりの豊漁で港に活気が戻る13年ぶりの豊漁で港に活気が戻る平方宣清さんタイラギ漁達人達人太良町の達人太良町の達人14

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